独自のランク付けで、最大40%の工数削減を実現


コニカミノルタビジネスアソシエイツ株式会社
シェアードサービスセンター 知的財産調査部 技術情報グループ
楠田 将之 様



◆貴社の事業内容について教えてください。

当社には、コニカミノルタグループ各拠点の管理業務が集結しており、総務、庶務、サイト管理、知財に関するサポート業務を行っています。

コニカミノルタ本体にも知財部門はありますが、主に発明発掘、知財戦略を担当しており、弊社では調査業務を中心に担当しています。
私の所属している部署では、親会社の開発者と打ち合わせをしたうえで調査スタッフが特許調査を実施しています。


◆Patentfieldを導入した背景

定常監視、いわゆるSDIの業務効率化は、部門として大きな命題でした。コニカミノルタの開発部門から、何十テーマもSDIを依頼されています。各テーマにつき、毎月およそ数百件から数千件の関連特許を見なくてはなりませんので、ひとりの調査スタッフがひと月に捌ききれるのは、多くても3テーマ程度。並行してクリアランス調査等のスポット的な調査を依頼されることもありますが、SDI比率は高く、全体業務比率の半分をSDIが占めるような状態でした。

以前に、SDI効率化ツールを独自に開発して運用していましたが、なかなか精度が上がらず、どうしたものかと考えていました。そんな頃、Patentfieldを見つけました。確か2018年の『特許情報フェア』だったと、記憶しています。まさに、私のやりたかったことを実現していたので、Patentfieldに飛びついたという感じでした。

 

◆どういった業務シーンでPatentfieldを使っていますか 

やはりSDIですね。AI分類予測機能をメインで使用しています。

使用しているのは、主に、多値分類。「〇か×か」に分類する仕様もあれば「光学や電気、メカ等の社内分類を付与してくれ」という仕様もあるので、開発側の意向に合わせてカスタマイズする感じですね。

工程としては、SDIの結果を調査スタッフがスクリーニングする前に、SDIの母集団をPatentfieldにインポートして、AIが予測する分類を付与してから、スクリーニングを開始するようにしています。調査スタッフとしては、公報の中身を読む前にAIが、付与すべき分類を事前に提示してくれますので、それを確認しながらスクリーニングをする事でスクリーニング時間の短縮ができます。ここで調査スタッフのスクリーニング効率を上げるために少し工夫をしています。AIの予測結果は100点ではなく、間違っている場合もあります。調査スタッフの立場からすれば、AIが予測した結果が100点でなければ、結局は全件を確認する必要があり、スクリーニング効率を大きく上げる事はできません。そこで、AI分類予測の際に、対象特徴量を変えながら、複数回、AI分類予測を実行しています。その複数回の予測結果に独自のランク付けする事により、AI分類予測の「確からしさ」ランク情報を付与するようにしています。

この独自のランク付けは、社内で練り上げていった活用法です。当初はスタッフから「AIは100点満点じゃないから、どうせ全部見なくてはいけないんでしょう」と言われ、私は打ち砕かれていたんですけど…(笑)。ただAIを導入するだけでなく、使い方を工夫することでAIの導入効果が高まっていきましたし、社内での信頼も得られるようになりました。

教師データをつくるとき、あまり選別や入れ替えはしていません。数ヶ月分のSDI結果、1,000件ぐらいを教師データとして登録しています。工夫していることとしては、ラベルごとの教師データの件数を均等になるようにしています。そのほうが、精度が高いですね。

時々苦労するのは、テーマによって教師データが少ない時でしょうか。そうなると何ヶ月分も遡ってデータを集めたりするのが、大変と言えば大変ですね。


AI分類予測「多値分類」の予測結果ページ(各公報の予測ラベルと予測スコアが表示される)



◆Patentfield導入によって感じている効果を教えてください 

定常監視・SDIの業務効率化が、部門として大きな課題だったわけですが、Patentfield導入後は30~40%の工数削減が実現できました。導入前はすべての検索結果に目を通していたのですから、当然と言えるかもしれません。

スポット的に依頼されるクリアランス調査にも、ある程度余裕をもって対応できるようになりましたし、当初の目的は達成できていますね。

それから当社は、オプションの「API連携サービス」も利用しています。さきほどお話したAI分類予測を複数回実行するのは、APIを利用して自動化しています。実行ボタンをクリックするだけで、複数回の予測結果がリストで返ってくるWebアプリケーションを独自に開発しています。「API連携サービス」には他にも複数のAPIが用意されています。APIであれば、これまでIDを付与されていなかった人もPatentfieldを使うことができるので、全体の稼働率が上がったと感じています。調査スタッフは特に、類似キーワードリストの取得や関連する特許分類のランキング出力をよく利用しているようです。


類似キーワード機能では、検索ワードの類義語をリストで取得できる


◆今後どのような業務でPatentfieldの活用を広げていきたいですか 

調査の品質チェックに使えないかなと、社内で検討しているところです。Patentfieldは母集団を入れるだけで「この特許分類がよく利用されている」というランキングを出してくれまするし、詳細検索で類似キーワードも取得できるますので、活用用途のバリエーションをもっと広げていきたいと思っています。

それからPatentfieldには、分類予測のサポートやパラメーターチューニング、そしてクロスバリエーションなど、数多くの機能が搭載されています。もっと使いこなしたいと思いつつ、なかなか難しくて…。ゆっくり使い慣れていく時間が欲しいところです。

要望としては、もっと独自機能を入れていってほしいですね。分析結果のAIサジェストとか、特許以外の外部データのインポートもできたらうれしいな、と思います。

それから、コニカミノルタの中には、社内分類が非常に細かく、AIには任せられないSDIテーマが多くあります。逆に言うと、AIを活用できるテーマはまだまだ少ないということです。そういう意味では、AIの精度向上にも期待したいですね。

検索結果母集団の特許分類FIのランキンググラフ



取材日:2023/3/24